March 25, 2006
『忘れ物を取りにHighburyへ』 第六日目（Liverpool戦）背中の名前はHenry?それともFabregas? （後編）
背が高い訳でない。
足が速い訳でもない。
超人的なボール捌きをする訳でもなく、超華麗な"舞"を見せる訳でもない。
そんな"彼（Fabregas）"はピッチ上の敵味方計22人の中で最年少にもかかわらず、ゲームの中心に君臨する。
ボールは彼を経由する。
"彼"は巧みにポジショニングを行い、味方のボールを受ける。
ダイレクトで叩（はた）くか、攻撃陣の陣形が整うまでキープするか、ロングボールを前方に放り込むか、自身でスペースを衝くドリブルを行うか・・・、"彼"は瞬時に判断し次の行動を行う。それは、まるでピッチの遥か上空から敵味方の陣形を眺めながら次に行うべき行動を選択しているように、適切で美しい。
前回（「最後のHighburyツアー」（年末年始））に観た時とは全くの別人・・・。
かつての"切れ"を取り戻しつつあるセレソンGilberto（ジウベルト）が、君臨する"彼"を献身的に支える。
ベテランガードに守られた"彼"は、アメフトのクウォーターバックのように試合を仕切る。
後半も"彼"を中心にArsenalがゲームの主導権を握る。
小気味良い攻撃が続くが追加点をなかなか挙げられないArsenal。しかし今日はLiverpoolに点を入れられる気が全然しない。DFも安定している。
このまま勝利か・・・と思った後半30分頃、悪夢が我々を襲う。
Liverpoolがゴール前に放り込んできたロングボールをDFがカット。カットしたボールが"彼"の元へ。
"彼"が自分の足元にそのボールを納めようとトラップしたその瞬間、後ろからLiverpoolの選手に削られて倒される。
「ファール！」
しかし主審の笛は吹かれない・・・。
我々は皆一斉に立ち上がり、両手を広げて審判に抗議する・・・。
「どこ見てんだ！」と叫んでる最中にGerrard（ジェラード）の豪快なミドルシュートが・・・。
Lehmann（レーマン）がパンチングで逃れる・・・、あれっ、中途半端なパンチング・・・。
ボールは走り込んできたLuis Garcia（ルイス・ガルシア）の正面に・・・。Luis Garciaはそのボールを流れに任せてヘディングシュート…。
あっ、入いちゃった・・・。
あっという間の出来事に呆然と立ちつくすArsenalサポーター。
声が出ない・・・。
歓喜に沸くLiverpoolサポーター…、ベンチを飛び出し猛然と抗議するボス。
1-1。同点…。
私の思考は全く停止したまま、両者をぼんやり見つめる。
何も考えたくない、思考を止めていたい・・・。
しかし、"怒り"とともに頭が回転し出す。それは全くネガティブな回転。
「何で、点を取れる時に取っておかないんだ！だからこういう事になっちゃうんだ。」
「何で、こんな時間帯に点取られるの・・・。」
「何だよ、あのパンチング・・・。」
両隣の"オヤジ"もぶつぶつ何かを呟いているが聞き取れない。
声が出ない・・・。
こういう展開になるとArsenalは弱い。ファンもそれを皆よく知っている。黙りこくったまま試合を見つめるArsenalサポーター…。
一方のLiverpoolサポーターは騒ぎまくり・・・。3,000人くらいの声がHighburyにこだまする。
何てこった・・・。
しかし、そんな状況を変えたのは"彼（Fabregas）"と"彼（Thierry Henry）"。
Liverpool陣内でGerrardがボールを持つ。
Gerrardにプレッシャーをかける"彼（Fabregas）"。Gerrardのパスコースを巧みに"切る"。
困ったGerrardがGKにバックパス・・・。
一体どこから現れたのか、もう一人の"彼（Thierry Henry）"がそのボールをかっさらい相手GKを振り切ってゴール！
あっという間の出来事に状況がよく理解できない・・・。でもゴール！
でも"彼（Thierry Henry）"はどこからやって来たの・・・。
爆発。
"彼"と"彼"が決めた先制点以上の爆発！
前後左右の"オヤジ"とハグの嵐。
離れて観戦していた妻も隣の"オヤジ"とハグしたらしい。
お次は"Thierry Henry"の歌。
そして試合終了の笛。
終わった。最後のHighbury観戦。
去りがたいけど、今日が最後。
このピッチを目に焼き付けるために最後まで客席に残る。
本当に去りがたいなぁ・・・。何だか悲しい。
セキュリティーに急かされ渋々ピッチを後に。
翌日の新聞には"彼"と"彼"の活躍の事が・・・。
どの新聞も写真には"Number 14"の"彼（Thierry Henry）"のゴールシーンが掲載され、文面は"Number 15"の"彼（Fabregas）"の活躍が紹介されている。
私は上機嫌。妻に記事を一つ一つ説明する。
「これはThierry Henryのゴールの写真だろ。でも、ほら、文面はFabregasの事が書いてある。」
「ほら、ほら、ここ見てよ。"Man of the Match - Fabregas Cesc"って書いてあるだろ。」
私の上機嫌は飛行場まで続く。
チェックインして免税店をぶらぶらする。
妻がお菓子を買うために立ち寄った店の一角に新聞・雑誌のコーナーを見つける。
妻を呼び寄せそのコーナーに置いてあった新聞をいくつか開く。
「これはThierry Henryのゴールの写真だろ。でも、ほら、文面はFabregasの事が書いてある。」
「ほら、ほら、ここ見てよ。"Man of the Match - Fabregas Cesc"って書いてあるだろ。」
全く、馬鹿な夫の世話をするのも大変だろうなぁ・・・。感謝してます。
でもね、良かったろ！Fabregasのユニにして！は、は！
Arsenal Number 7/hanai
Comments
HIRO:
同点にされてしまった時はどうなることかと思いましたが、勝ててよかったですよね。Henryが決めたときはあっけにとられました^^;こんなゴール初めてでしたので、私にとってhanaiさんがご覧になった２試合はとても印象的でとっても羨ましいです☆これも不断の応援の賜物でしょうか♪
童心にかえれる魅力がArsena,highburyにはあるんですね。とってもいい試合ではありましたが、忘れ物は全部持ってかえってこれましたでしょうか・・・(?_?)両手で抱えるほど沢山の思い出、感動、忘れられない宝物ですね☆
童心にかえれる魅力がArsena,highburyにはあるんですね。とってもいい試合ではありましたが、忘れ物は全部持ってかえってこれましたでしょうか・・・(?_?)両手で抱えるほど沢山の思い出、感動、忘れられない宝物ですね☆
(March 25, 2006 23:29:59)
hanai:
HIROさん、
Real戦、Liverpool戦、本当にいい試合でした。
Highburyで"童心に返る"というより、私はまだ子供なんです。本当に子供です。救いようがありません・・・。
忘れ物・・・。忘れ物だらけです。３シーズンくらいロンドンに居ないと忘れ物捜せないなぁ・・・。
移住しちゃおうかな・・・。
Real戦、Liverpool戦、本当にいい試合でした。
Highburyで"童心に返る"というより、私はまだ子供なんです。本当に子供です。救いようがありません・・・。
忘れ物・・・。忘れ物だらけです。３シーズンくらいロンドンに居ないと忘れ物捜せないなぁ・・・。
移住しちゃおうかな・・・。
(March 26, 2006 01:20:00)
