May 10, 2006
伝説 [ I was there (with Arsenal) ]
I was there (with Arsenal).
昔、昔、北ロンドンのある所にHighburyというスタジアムがありました。
古い古いスタジアムだったので、補修のためのペンキの匂いがいつも立ち込めていました。
むき出しの配管、せまい座席、視界を遮る屋根に柱・・・。
古くて小さなスタジアムだったけど、何故かその雰囲気が皆に愛されていました。
ある時、Highburyの地主さんがこのスタジアムを立て直す事を決めました。ここでボール蹴りをするArsenalという若者達をもっともっと沢山の人々に知ってもらうために・・・。
そしてとうとうHighburyでボール蹴りをする最後の日がやってきました。
この晴やかな記念日の為に、いろいろな人が沢山の準備をしました。
芝刈り屋さん達は、[Highbury 1913-2006]という文字を芝の上に浮かび上がるよう、芝を丹念に刈ってその文字をピッチの上に4箇所も作りました。それはHighburyの芝刈り屋さんにしかできない芸術的な手細工。
仕立て屋さんは赤と白の洋服を作りました。そしてその服の上に"I was there（私はそこに居た）"とちょっと意味深な言葉をあしらいました。そしてその服をボール蹴りを見に来る人達に配ることにしたのです。優しいHighburyの仕立て屋さんは青い服も作ることにしました。Highburyには隣村からやって来る荒くれ者が何人か紛れ込んできます。その人たちは自分たちが隣村からやって来た荒くれ者であることを隠そうとせず、むしろそれを誇ったりします。優しい仕立て屋さんはそんな"隣村の荒くれ者"の為にも青い服を用意したのです。本当に優しいHighburyの仕立て屋さん。
そしてボール蹴りを見る来る人達。
仕立て屋さんは赤と白の服を見物人一人ひとりに配り、見物人にこれを着て応援するようにお願いしました。隣村からの荒くれ者には青い服を配りました。
Highburyに集まる見物人は何故かとってもシャイ。皆でかたまり一緒に何かをするのがとっても苦手（それが一種の団結感にもなっていた）。
しかし、この日ばかりは配られた赤と白、そして青い服を着てボール蹴りを観戦することにしました。
観客席はだんだんと赤と白に染まり、遠くから見ると本当に美しい花壇のようでした。隣村の荒くれ者も大人しく青い服を着て、この"人花壇"に協力してくれました。
実はこの頃、この日の"伝説"を予見するような事件が東隣の村で起こっていました。
東隣の村で集団食中毒が発生したのです。
東隣の村でも、WestHamとSp**sという若者グループのボール蹴りが行われる予定でした。
この日のボール蹴りで、Sp**sがWestHamに勝つと、Sp**sの若者達は来年ヨーロッパ旅行に行ける切符がもらえることになっていました。ちょっと難しい話になるんですが、Sp**sが負け、Arsenalが勝つとArsenalがヨーロッパ旅行に行ける・・・。Sp**sが引き分けて、Arsenalが勝つと・・・。
ともかく、Sp**sが勝てばヨーロッパ周遊券は彼らのものに・・・。
Sp**sを応援する人たちはArsenalの事が大嫌いでした。この日もSp**sの応援に来た人達は"俺達はバルセロナを応援する"と書いた服を着てボール蹴りの会場に大挙して押し寄せました。何としても来年ヨーロッパ旅行に出かけたかったのです。
しかし・・・。
しかし、Sp**sのボール蹴りに出場する若者の何人かが食中毒で倒れてしまったのです。
Sp**sの人達は懐疑心が非常に強く、Arsenalを応援する若者がSp**sの宿屋に忍び込み食事に"毒"を盛ったんだと強く主張しました・・・。でも実際は、ボール蹴りの神様がSp**sに試練を与え、本当にヨーロッパへ行く資格があるかどうかを試したのでした。
ボール蹴りの神様は既にArsenalにも"試練"を与えていました。それはSp**sに与えた"試練"よりも、もっともっと強く厳しい"試練"でした。
去年の夏にキャプテンと何人かの選手を取り上げ、冬には9人もの選手が怪我したり、アフリカから帰って来れなくなったり、行方不明になったりしました。しかし、Arsenalはその"試練"を正面から受け止め、ボール蹴りの神様を信じて疑いませんでした。
そして"伝説"が創られたのです。
ボール蹴りの神様から与えられた"試練"によって、この日Highburyに集まった人達は選手も含め皆疲れていました。疲れきっていました。しかし、ずっとずっと昔からボール蹴りを支えてくれたHighburyに感謝するために皆一生懸命でした。
ロベルト君が先制点を挙げました。ロベルト君らしい、ちゃっかり決めたゴールでした。
行方不明になったソル君も頑張りましたが、今度はボールの"行方"を見失ってしまい同点・・・。
それに動揺したイェンス君が立ち眩みを起こして逆転を許す・・・。
しかし、赤と白の服を着た応援団は歌い続けました。夏の悲しみ、冬の試練に比べれば、こんなの軽い軽い！ボール蹴りの神様、俺たちゃ、こんな事ではめげないよと・・・。
応援団の歌の中、ロベルト君からティティ君に素晴らしいスルーパス。
ロベルト君とティティ君は大親友。良い事をする時も悪さをする時もいつも一緒でした。DuoPKと呼ばれた馬鹿げたお遊びでひんしゅくを買った事もありました。
でも、この二人、馬鹿げていようが何であろうが、調子に乗ったら誰にも止められないのです・・・。
それは、それは、見事なゴールでした。絶妙なタイミングとスピードで繰り出されたパス、それにひらりと飛び乗って繰り出されたシュート。芸術・・・。
追いつきました。
ここでボール蹴りの神様はやっと我々に与えた"試練"を解いてくれました。そして"ご褒美"を与えて下さったのです。
敵チームからティティ君にパスを下さったのです。
ティティ君は見事な切り返しでゴールキーパーをかわし、ボール蹴りの神様の"ご褒美"をありがたく頂きました。
赤と白の応援団も、選手達も皆が一つになって喜びました。ボール蹴りの神様が与えて下さった"ご褒美"を皆で感謝しました。そして歌を歌いました。
ボール蹴りの神様は皆の行いとティティ君の行いを見て、もう一度"ご褒美"を我々に与える事にしました。
フレディー君をベンチからピッチに呼び寄せ、ここで転べと指差したのです。
フレディー君はボール蹴りの神様の云う通りにゴールの前で転びました。ＰＫ！
もちろんＰＫを蹴るのはティティ君。
ゴーーーーール！
ティティ君はゴールの後、跪いてボール蹴りの神様に感謝のキスを捧げました。
皆喜びました。そして歌を大声で歌いました。
Sp**sはWestHamに敗れました。ボール蹴りの神様が与えて下さった"試練"に打ち勝つ事ができなかったのです。
来年のヨーロッパ旅行はArsenalの手に。
Highburyのボール蹴りに幕が下ろされました。
しかし、その10日後にボール蹴りの神様がまたまたHighburyに"ご褒美"を下さったのです。
Arsenalの若者達は"大きな耳"と呼ばれる、ヨーロッパで一番高い山の登頂に成功したのです。
Highburyの芝刈り屋さん、洋服屋さん、牛乳屋さん、おもちゃ屋さん、皆が大喜び！
"大きな耳"から戻ったArsenalの若者達をHighburyで出迎える事になりました。
そのパレードには50万人が集まり、皆でボール蹴りの神様に感謝の気持ちを捧げました。皆で歌いました。皆で踊りました。ボール蹴りの神様に感謝を捧げるために・・・。
そして、この年に起こったことが代々"伝説"として語り継がれました。
I was there (with Arsenal).という語り口で始まる"伝説"として・・・。
Arsenal Number 7/hanai
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