September 03, 2006
最後の日（8月31日）。始まりの日（9月1日）。
最後の日、Jose Antonio Reyes（レジェス）がReal Madrid（レアル・マドリッド）に去った。
快速Winger。FWもこなす。
その左足から繰り出されるシュートとパスは正確で速い。
トリッキーなプレーも得意な天性の攻撃型フットボーラー。
ボスは"彼"を獲得する数年前から"彼"を観察。2004年の1月に獲得の決断を下した。その獲得額は2千万ポンド（約40億円）以上と言われている。
これはArsenalのクラブ史上最高額である。その時、彼はまだ20歳だった。
Carling Cupの準決勝（だったと思う）Middlesbrough（ミドズルブラ）戦、"彼"はArsenalでのゴールデビューを"Own Goal"であげる。敗戦。Carling Cup敗退…。
そんな鮮烈なゴールデビューを果たした"彼"だったが、続くFA Cup5回戦（Chelsea戦）で名誉挽回のゴールをHighburyのファンの前で決める。
Chelseaに１点リードされた後半、ミドルレンジから左足を振り抜き豪快な同点弾！あの見事な弾道は今でも忘れない。
この試合Thierry Henryはお休み。Highburyのファンは、史上最高額で獲得した若者の凄まじいシュートに狂喜乱舞した。
この日はそれだけで終わらなかった…。左サイドを抜け出した"彼"はゴール前で左足をボールにチョコンと合わせ決勝ゴール。豪快さと柔軟さを持ち合わせた天性の攻撃型フットボーラー、Reyes。
クラブ史上最高額を支払ってでもこの若者を獲得したボスの決断が、Arsenalファンの前で"正し"かったと証明された瞬間だった。
忘れられない瞬間はまだまだ沢山ある。
"彼"がArsenalにやって来た年（03/04シーズン）、我々はUnbeaten（不敗）で優勝を飾った。シーズンの終盤、優勝も決まり少しふらふらしていた（疲れていた）Arsenalを彼は"2度"救ってくれた。
Portsmouth（ポーツマス）戦での同点弾（引き分け）。続くFulham戦では相手GKのVan Der Sar（ヴァン・デル・サール）からボールをかっさらい決勝点を挙げた（0-1）。両試合ともアウエーでの戦い。Arsenalは明らかにシーズンの疲れが出ていて調子は最悪だった。
この二試合で"彼"がゴールを挙げなければ、サッカー史に残るArsenalのUnbeaten（不敗）優勝は無かったかもしれない。
翌シーズン（04/05シーズン）、"彼"は開幕から5試合連続ゴールを挙げチームも5連勝。
「"彼"はどれだけ今シーズン活躍するんだろう…」誰もがそう思ったに違いない。しかし、ロンドンの冷たく暗い季節がやって来ると共に、"彼"の躍動感が徐々に消えていった。
フットボールに集中するため、"彼"はロンドンに家族とガールフレンドを呼び寄せた。
その"館"は「リトル・スペイン」と呼ばれ、冷たい冬の間も半袖で過ごせるよう"館"中に暖房が焚かれいたそうだ。スペイン料理、スペインの新聞、スペインの…。
この頃から"彼"のホームシックが囁かれ始めた。
私は"彼"がArsenalを出て行くなんて全然思っていなかった。"彼"とは2011年までの契約があるし、いつものようにスペインのメディアが騒いでるだけだと思っていた。
しかし、下の写真をWebで発見してから、"彼"はArsenalを去るつもりなんだなと思い始めてました。
この写真はCesc（セスク）がCL予選のZagreb（ザグレブ）戦でゴールを決めた後、真っ先にベンチに座るReyesに駆け寄って"彼"を抱きしめたものです。
この試合ボスは、「ReyesはArsenalのために戦う準備が未だ出来ていない」との理由で、レアルに行きたいと発言した"彼"をベンチに置き試合で使いませんでした。
（Reyesは同胞であり年下であるCescには正直に、そしてストレートに自分の気持ちを伝えているに違いない。CescはReyesの"決意"の固さを知って、自分のゴールを彼に捧げたんだろう…。）
私は勝手にそう思い込みました。
Cescの思いやりと大好きなReyes（子供で少々頭は弱いが…）を失う悲しみで、センチで涙もろい私は（頑固で強情でもあるが…）この写真を見て思わず涙を流してしまいました。
Arsenalの主力イングランド選手二人が、チームとの契約が複年数残っているにもかかわらず、自分のわがままを通し移籍志願（そのうちの一人はチームとの"約束"を反故にして去って行った）。
子供で少し頭の弱い"彼"は、「自分も許される」と思ったのかもしれません。
Reyes…。
半年前には私の目の前を颯爽と駆け抜けていたのに…。
実際にこの目であなたの"速さ"を見て本当に驚愕しました。
Reyes…。
音痴な私が音程を間違えずに歌える唯一のチャントだったのに…。
♪Jose Antonio, Jose Antonio♪
もう歌えないのか…。
Jose, 人生は長く険しい。そして悪いことに、人生は短くもある。
Jose, 同じ失敗を繰り返すなよ！
Good Luck!! Jose!! See you!!
始まりの日、Julio Baptista（ジュリオ・バティスタ）はこうきり出した。
「個人的な事になるが…、私は未だ優勝を経験したことが無い。だからArsenalで今シーズン、タイトルを獲得したいと願っている。」
Reyesとの交換トレードの噂が出るたびに「私はレアルに残ってプレーしたい。たとえレギュラーで使われなくとも…。」と頑なにその姿勢を変えなかった"Beast（野獣）"（Baptistaのニックネーム）。
"彼"のロンドンでの"始まりの日"は、Arsenal選手として今シーズンを戦う事の誇りと、チームに馴染むのには時間は必要ないと思われる発言が続く。
「Arsenalはヨーロッパで最も有名なクラブの一つだ。私はここでプレーできる機会を与えられ本当に幸せだ。監督（ボス）の事も知っているしね…。」
「Arenalの選手の事もほぼ全員知っている。ブラジル代表のGilbert（ジウベルト）、Thierry Henry（アンリ）やFabregas（ファブレガス/Cesc)の事も知っている。実際、全員の名前を知っているよ。」
我々と"Beast（野獣）"との物語の"始まり"（出会い）は祝福されたもので無かった。
05/06シーズンが始まる直前、我々は突然キャプテン（Vieira（ヴィエラ））を失った。
ボスは"Beast（野獣）"に狙いを定めていた。
そのニックネームが示す通り、"Beast（野獣）"は中盤で相手選手のボールを獰猛に狩り獲る事を得意としていた。
それだけでない。"Beast（野獣）"は狡猾に相手の息の根を止める術も持ち合わせていた。
当時在籍していたSevilla（セビージャ）で63試合に出場し38ゴールを挙げていた。
中盤をフィジカルで支配する。Arsenalのスタイル。
中盤からの飛び出しでゴールを決める。Arsenalのスタイル。
しかし、我々が失ったキャプテンには"Beast（野獣）"ほどの決定力は無かった…。
ChelseaのLampard（ランパード）。
LiverpoolのGerrard（ジェラード）。
そして、ManUのScholes（スコールズ）。
プレミアのライバルチームには中盤でフィジカルに強く決定力がある選手がいる。
しかし、"Beast（野獣）"はそれ以上の逸材だ…。
ボスが"Beast（野獣）"に夢中になるのも無理は無い。
私も"Beast（野獣）"に夢中になった…。
しかし…、"Beast（野獣）"はレアルを選んだ。
私とAKIさんはレアルを選んだ"Beast（野獣）"を「ブランド野郎」と呼び、彼の事は一切忘れることにした（しかし、彼がレアルを選んでくれたおかげでCescが大成した）。
我々と"Beast（野獣）"の物語の始まりは"不幸"なものだった。
でも、"Beast（野獣）"との物語は"Happy End"で終わると信じています。
Julio, 人生は長く険しい。そして悪いことに、人生は短くもある。
Julio, 始まりは悪かったけど、仲良くやろうぜ！
Welcome to Arsenal, Julio!!
Arsenal Number 7/hanai
追伸： "Beast（野獣）"はNumber 9を付けるようです。
Comments
noboru:
私もFA CUPチェルシー戦の天井に突き刺したミドルシュートが忘れられません。スゴかったです。
でも結局はなじめなかったみたいですね〜
原さんも仰ってましたけどやっぱりアンダルシアからロンドンというのは結構厳しいんでしょうね。まあ人に寄りますが。
バチスタはスゴい楽しみです。
ああいうタイプがいないのでかなり期待してます。
ボスがうまくフィットさせてくれる事を期待します！
でも結局はなじめなかったみたいですね〜
原さんも仰ってましたけどやっぱりアンダルシアからロンドンというのは結構厳しいんでしょうね。まあ人に寄りますが。
バチスタはスゴい楽しみです。
ああいうタイプがいないのでかなり期待してます。
ボスがうまくフィットさせてくれる事を期待します！
(September 03, 2006 09:37:23)
london pride:
私もレジェスはホント惜しいです。せっかく馴染んできて無くてはならない存在になりつつあったのに・・・・。拝田さんも仰る通り、同じスペインでもヨーロッパ中心の一部であるカタロニアやUKに近いガリシアとは違い、コスタ・デル・ソルのアンダルス人にはロンドンはつらいのかも知れません。その辺のプロとしての適応力の無さが、子供っぽいというか、hanaiさんの表現なら「頭の少し弱い」という事なんでしょうね。これを克服しないとよほど良い指導者に恵まれなければ、才能を充分開花できないような気がします。バチスタはアーセナルには今少ないアグレッシヴな選手で良い補強でした。予定通りギャラスも獲れ、アシュリー問題も解決！やっとここから本当のスタートがきれますね。
(September 03, 2006 15:07:51)
hanai:
拝田さん、
ReyesのFA Chelsea戦でのゴールは本当に忘れられないゴールですね。
まあ、本人と家族がロンドンの生活に馴染めないならしょうがないですね。
でも、何で2011年まで契約したんだろう…。
Baptistaは楽しみですね。
頑張ってもらいましょう！
ReyesのFA Chelsea戦でのゴールは本当に忘れられないゴールですね。
まあ、本人と家族がロンドンの生活に馴染めないならしょうがないですね。
でも、何で2011年まで契約したんだろう…。
Baptistaは楽しみですね。
頑張ってもらいましょう！
(September 04, 2006 00:22:24)
hanai:
london prideさん、
やっと何とか戦力が整ったって感じです。
あとは獲得した新しい選手が馴染んでくるまでの我慢ですね。
頑張りましょう。
やっと何とか戦力が整ったって感じです。
あとは獲得した新しい選手が馴染んでくるまでの我慢ですね。
頑張りましょう。
(September 04, 2006 00:24:56)
